ボイストレーニング方法について勘違いしている人がとても多い。
だから、ボイストレーニングの受け方にスポットをあてたい。
ボイストレーニングのポイントは大きく2つに分けることができる。
1.先生から教えてもらうこと
2.自分で行うこと
これをゴッチャにすると無駄にレッスンを受けることになり、出費も多くなってしまう。
無駄な費用を抑えるためにも是非頭に叩き込んでいただきたい。
先生から教えてもらうこと
プロの声楽家とのあなたの大きなスキルの違いは何だと思いますか?
それは3つあります。
1.横隔膜を動かす能力
2.聴く耳
3.発声のチューニング能力
この3つが大きな違いであり、この能力をあなたはボイストレーナーから教わる。
例えば60分の間に横隔膜を上手に動かす方法とそのトレーニング方法をしっかりと教わる。
そして1週間~2週間、自宅やレッスンスタジオでそのトレーニング方法を復習する。
次回のレッスンにそのトレーニング効果をボイストレーナーに確認してもらいます。
改善出来た点と至らない点をチェックしてもらい、またトレーニング方法を教えてもらいます。
そして1週間・・・
というような感じで繰り返します。
基本原則を抑える
ボイストレーニングを受けるということは以下の2つに原則に集約できます。
・練習の成果をプロの声楽家の目と耳でチェックしてもらい新たなトレーニング方法を教えてもらう。
要約すると次のようになる。
・ノウハウを手本にトレーニングは自分で行う
ボイストレーニング方法の価値
プロの声楽家はその境地に達すまでに数千万円の投資を自分に対して行っている。
そして最低でも15年以上の時間を費やして鍛錬を繰り返している。
そこまで金と時間を投資したからこそ、効果的なトレーニング方法が確立できる。
そこまで投資して手に入れたノウハウを教えてもらうことにボイストレーニングの価値がある。
ここが大事。
ノウハウにお金を払う意識
ボイストレーナーを自分の練習相手にしてしまっては、もったいない。
あなたは、そこにお金を払ってはいけない。
ノウハウにお金を払うというポイントをしっかりと認識する必要がある。
だから、毎日ボイストレーナーに付いてもらう必要などない。
週一回しっかりとノウハウを教えてもらい、そのノウハウを信じて自分で鍛錬するという習慣を身につければ、必ず劇的に上達する。
3つの能力を解説
横隔膜を動かす能力
発声で一番大事なことは横隔膜を動かす能力になる。
この横隔膜を動かすというのは、初心者には理解するのが難しいトレーニング。
よく腹式呼吸と呼ばれているが、ボイトレマッチでは横隔膜呼吸と読んでいる。
腹式呼吸という言葉は正しいのだが、複式という言葉がどうしてもお腹で呼吸をコントロールすることを連想させてしまう。
これに陥るとそこから抜け出すのが非常に難しくなってしまう。
だからあえて横隔膜呼吸と呼んでいる。
なぜ横隔膜をトレーニングするの?
わかりやすく例えると肺と横隔膜はエンジンになる。
現在のあなたの横隔膜は車であれば軽自動車だ。
普通に会話するなら、これで問題ない。
しかし、歌手として活躍するには、これを大型で大馬力の強烈なエンジンに変えなければならない。
大馬力のエンジンを積むことではじめて自分の声を自在に操ることができるようになる。
この軽自動車のエンジンでタイヤを変えたりブレーキを変えたり、小さなエンジンをイジくり倒して無理な馬力を出そうとするから、大変なことになる。
最悪すぐ壊れる。
喉に結節が出来るのは、このパターンがとても多い。
ボイストレーニングもこれと全く一緒
横隔膜が発達していない段階から、ビブラートやらミックスボイスやらヘッドボイスやら高い声やら低い声・・といったことを詰め込むから大変なことになる。
小手先のノウハウは本物のノウハウではないという事は必ず覚えておくべきだ。
聴く耳を鍛える
聴く耳の重要性については意外と論じられていないので、触れておきたいと思う。
ボイストレーニング受けるのは、プロの声楽家の優れた耳であなたの声をチェックしてもらうことに大きな意味がある。
ボイストレーナーはあなたの声の響きを聞き取り、横隔膜がきちんと使えているかどうか、声帯のポジションが低く保たれているかなど細かな点をチェックして、矯正するための方法を教える。
上記でも触れたように、ボイストレーニングは発声のノウハウをトレーナーから教えてもらい自分でトレーニングすることの繰り返し。
ボイストレーニングを受けている間はボイストレーナーの耳を頼りにすれば良いが、自分でトレーニングするときはあたの耳が頼りになる。
だから、優れた聴く耳を育てることは、あなたの成長を早めることになる。
ボイストレーナーは正しい呼吸法により発せられる声と間違った呼吸法により発せられた声の違いを必ず聞かせてくれる。
耳を鍛えていれば、その違いをハッキリと聞き分けることができる。
違いを聞き分けることができるという事は、正しい呼吸法をイメージし易いということだ。
インプットの方がはるかに重要
プロの声楽家も最初から優れた耳を持っていたわけではない。
世界最高の声楽家のCDをたくさん聴き、その違いを聞き分けて能力を磨いた。
あなたもボイストレーナーから参考になる楽曲を教えてもらえるだろう。
優れたボイストレーナーであればあるほど、あなたにも聞き分け易い楽曲を選び、あなたの聴く耳が早く育つように指導してくれる。
ボイストレーニングというとアウトプットの歌う事ばかりが注目されるが、実はインプットの方がはるかに重要。
英会話をマスターするにはスピーキングのトレーニングより、リスニングのトレーニングを重要視するのと同じ論理である。
発声のチューニング能力
横隔膜呼吸のトレーニングと聴く耳を鍛えることにより強力なエンジンが完成したら、次はタイヤやハンドルやトランスミッションといったコントロールする部品を作らなければならない。
その部品が発声では声帯などのパーツになる。
ここではじめて声帯というキーワードが出てきた。
ボイストレーニングというとすぐに声帯が云々といった記述やトレーナーのウンチクが目に付くが、この段階になってはじめて声帯のチューニングを行っていくことが望ましい。
小さなエンジンで声帯をいじくり倒してもエンジンも声帯も火を噴くのは目に見えているからだ。
順番を間違えはいけない。
付け焼刃は、時間もお金も無駄になるだけだ。
ボイストレーニングを受ける側の心得も重要
ボイストレーニングというとビブラートや高い声を出したいといったことに飛びつく人がいる。
カラオケで高得点を取りたいのであれば、それでもよい。
カラオケでは誰もあなたの歌など聴いていない。
あなたが歌っている間は、一生懸命自分が歌う曲をコントローラーで探しているからだ。
自分のために歌うのであれば、いくらでも声帯を張って雑音のような声を撒き散らしても、下手なビブラートで友達に自慢しても構わない。
しかし、プロとして歌うのなら話しは別。
プロと素人の違いは他人のために歌うか、自分のために歌うかの違いである。
歌う目的が違うのだ。
歌手としての礼儀
他人のために歌うには、雑音ではいけない。
最高の響きと卓越したテクニックで美しいメロディーを歌い上げる事は、歌を聴いてくれる人への最低限の礼儀。
そのためには、横隔膜を動かすトレーニングを行い聴く耳を育て発声のチューニング方法を知るという3つの鍛錬を繰り返し行うことが重要なのです。