お手本にしたいブロードウェイミュージカル俳優

お手本にしたいブロードウェイミュージカル俳優

声楽を学ぶ上でお手本なる俳優を厳選

ミュージカルのボイストレーニングを行う上で、インプットはとても重要です。

インプットとは、お手本となる良い歌声を聴くこと。

たくさんのお手本を聴き、その音を身体の中に吸収することで、良い発声を聞き分ける土台となる『聴く力』を作る必要があるからです。

しかし初心者は、そのお手本探しでかなり苦労します。
初心者は『聴く力』がありません。
ですから「良い歌声ってどんな声・・?」といった状態ではお手本探しが難航するはずです。

しかもミュージカル俳優は、本場のブロードウェイやウェストエンドに星の数ほどいます。
そして一流と称されている俳優もたくさんいます。

その中からお手本を探すのは、初心者だけではなく中級者や上級者でも時間のかかる作業でしょう。

初心者は、『どの俳優が最適なお手本なのか』『その俳優のどういったところが本場では評価されているのか』を理解することさえ難しいのです。

ですから、ボイトレマッチでは声楽を学ぶ上でお手本なる俳優を厳選し、コメントをつけて紹介することにしました。

基準は・・?

この記事で紹介する俳優意外にも、教材となるお手本はたくさんいるのですが次ような基準で掲載しています。

1.YouTubeやinstagramに音声の良い多数の動画がアップロードされている
2.舞台やコンサートで訪日したことがある

SNSに動画が一定数存在しないと教材として聴くことができません。

また、訪日したミュージカル俳優は何度も舞台やコンサートをするために、再度訪日する傾向があります。
そういった俳優を知っていれば、コンサートや舞台を見にいくきっかけにもなります。

生演奏を聴きにいくことはとても大切ですから、このような基準で選びました。

※訪日していない俳優については、第2弾の記事を現在執筆中です。

ブロードウェイの現状

ブロードウェイミュージカルは、世界中からの観光客で賑わっているイメージを持っている人もいると思います。

しかし実際の興行収入は、アメリカ国内のファンに支えられています。

外国人観光客からの興行収入は、20%にも満たないビジネスモデルです。

8割の観客はアメリカ人で、その多くはリピーターです。

要するに、ブロードウェイミュージカルは、アメリカ人のリピーターに支えらえています。
そのリピーターは、年齢も比較的高い層が多く占めています。

子供の頃から、ミュージカルの音源をテレビやラジオで聴き大人になってからミュージカルに足を運んでいるファン層でしょう。

恐らくですが、この記事を読んでいる読者よりこのリピーター観客の方が遥かに耳が肥えています。

ですから、まずはそのファン層に負けないくらいミュージカルを聴きこまなければなりません。

ミュージカルの発声を理解するためにはインプットが重要です

リスニングで耳を補強しなければならないことは他の記事でも書いていますが、再度言わせてもらうと「自分に聞こえない音は、その音をアウトプット(発声)することが出来ない」からです。

リスニングはダラダラと聴き流すのではなく、積極的に聴く姿勢が問われます。
積極的に聴くことにより、トップパフォーマーが共通して持っている「音」そのものが聞こえてくるようになります。

今回はそのリスニングで最適な教材となるミュージカル俳優を紹介します。

※ここで紹介している人はあくまでもミュージカルの歌唱の手本となる俳優です。
『ブロードウェイミュージカル俳優ベスト5』みたいなものではありませんのでご了承ください。

Cynthia Erivo/シンシア・エリボ

まず最初に紹介するのはCynthia Erivo。
Cynthia Erivoは、歌手として完全体と言い切ることができる唯一の俳優でしょう。

あなたがよほどの偏屈でなければ、彼女の歌声に触れればその意味を確実に理解できると思います。

使い回された言い方で申し訳ありませんが、彼女の歌声は聴衆の心を奪うことができます。
鳥肌がたち、感動のあまり涙が溢れ出てくるのです。

否応無しに彼女の世界へと引きずり込まれ、その世界は今まで経験したことのない次元のものとなるでしょう。

その世界は、とてつもなくとても温かみのある心地の良い世界でもあり、悲しみのあまり絶望しか取り囲んでいないような世界が入り乱れた究極の世界観をと言えるかもしれない。

その世界観を演出するのは、Cynthia Erivoの極限まで鍛錬された共鳴テクニックとブレスコントール。

それは彼女の最大の特徴とも言える『声の深み』から全て表現されます。

『声の深み』を共鳴として表現するのは、生まれ持った才能では決してない。
それは、日々の鍛錬からのみ生まれるものだ。

また彼女は人生最高の幸福も堪え難い絶望も感情で歌うことはありません。
抽象的な表現なってしまうが、彼女はどのようなシーンにおいても気持ちで歌います。
だから、完全にピッチがコントロールされた状態をどこでも保つことができるのです。

私達は常々「明るい響きの中に憂いを出さなければならない」と言い続けています。

それを表現できる数少ない俳優です。

エマ・キングストン/Emma Kingston

次にに紹介するのはEmma Kingston(エマ・キングストン)です。

読者のほとんどはご存知でしょう。

エビータで日本公演も行っており日本人のミュージカルファンにはかなり知られてきました。


Emma Kingstonは、現時点で世界トップレベルの歌唱テクニックを持っており、一番脂がのっている時期かもしれません。

彼女の凄さは、ミュージカルの王道の歌い方が完璧に近い形で表現できるテクニックを持っていることです。

それは、彼女が幼少のころからクラシックの基本をみっちり身体に仕込んできたことも大きく影響しています。
クラシックとの繋がりは、他メディアのインタビューで実際に彼女自身が語っていますが、次のような動画で披露している裏声のブレスコントロールからそれは容易に想像できることです。


そしてレディーガガなどのロックテイストやR&Bテイストの歌い方も難なくこなすことができる新しい世代の俳優です。

ブロードウェイミュージカルは、時代とともに様々なスタイルの楽曲が作曲されます。
その中には、70年代~90年代のR&Bやポップスに近い楽曲もあります。
※例えばハミルトンの代表的な楽曲”The Schuyler Sisters”。

そうした楽曲を歌うだけなら、クラシックの基本を身につける必要はありません。

しかし、ミュージカルの王道の歌い方は、クラシックの基本はやっていて当たり前の世界です。
注※クラシックの声楽だけトレーニングしてもミュージカルは歌えません。他の記事を読んで参考にしてください。

そして、その王道を極めた俳優がブロードウェイやウエスト・エンドではリスペクトされ評価が高くなります。
そうです。前述した『リピーター観客』からの評価ですね。

彼女は、喉でガンガン鳴らすわけもなく、裏声の割合が多いわけでもない素晴らしいミックスに仕上げています。

よく訓練されたテクニックだということが聞けばすぐに理解できるしょう。

高いポジションを維持しダイナミックに歌う姿は圧巻です。そして、楽曲をとても丁寧に歌う歌手の一人でもあります。

この丁寧に歌い上げるというのも重要です。
やさしく丁寧に歌うためには、とても強いフィジカルが必要になるからです。

最後に珍しい動画を貼り付けておきます。
Courtney Reedと歌っているライブ映像。
Courtney Reedはブロードウェイのアラジンでジャスミン王女役の女優です。
2人とも高いポジションを維持して歌いきっています。

シエラ・ボーゲス/Sierra Boggess

お馴染みのSierra Boggess(シエラ・ボーゲス)も紹介しておきましょう。
既に生きる伝説となっている俳優ですね。

代表作は、The Little Mermaid(リトル・マーメイド)とThe Phantom of the Opera(オペラ座の怪人)をあげておきます。

The Little Mermaidはアリエル役のオリジナルキャスト、The Phantom of the Operaはクリスティン役です。

上の動画ではこれ以上にないお手本の歌い方を披露しています。
これにはミュージカルの歌唱に必要な技術が全て組み込まれています。

特にオペラ座の怪人25周年記念公演の出演は、彼女の数あるキャリアの中でも有名過ぎる舞台です。

Sierra Boggessの歌唱は『ザ・ミュージカル!』と言ってよいほど王道中の王道の歌い方です。

非常に高いポジションを維持しながら、think of me などの難曲を歌いこなすテクニックを持っています。

軽くてソフトな音と強いけれどもキンキンしない丸みの声を発声することができるのは、彼女のフィジカルの強さが大きく関係があります。

一応、シエラ・ボーゲスについては、触れておかなければならないことがありますので書いておきます。

この記事を読んだり、他のメディアやYOUTUBE等でシエラ・ボーゲスのことを知った人は彼女のことを調べると思います。

調べていく内に4stars等のコンサートについてのネガティブな感想を見ることもあるかもしれません。

しかし、それは無視してよろしいかと思います。

Sierra Boggessの歌は、野球でいうところのシーズンオフに歌うコンサートではなく、レギュラーシーズンに歌うミュージカル舞台にその真価を発揮します。

彼女の実際の舞台での歌は圧巻です。
彼女が舞台で来日した時は必見ですからインスタ等をチェックしておきましょう。
また、ブロードウェイに行った時は必ず見てください。

声楽とは関係ありませんが、カワイイ猫と暮らしています。


猫好きに悪い人はいません。

Lea Salonga/レア・サロンガ

今さら説明は要らないと思いますが、念のため触れておきます。

ミスサイゴンといったらLea Salongaですね。キム役のオリジナルキャストです。

彼女がいなかったら、ミスサイゴンは当時あれほどまで大成功しなかったかもしれません。

ディズニーファンの読者ならアラジンやムーランで彼女のことを知っているかもしれませんね。

彼女のミュージカルについての紹介は他のメディアにお任せして、ここでは声楽について解説します。

一番強調しておきたいのは、現在48歳のLea Salongaは、いまだに声楽テクニックが進化しているというポイントです。

このことから、彼女は非常に勤勉な俳優であり、常に声楽について真正面から取り組んでいる結果だと言えるでしょう。

また、舞台以外での現場(テレビ出演やコンサート)でも舞台と同じレベルの歌唱力を維持していることから、オンオフ関係なく入念なトレーニングを行っていることを察することができます。

これは、既にプロとして活躍しているミュージカル俳優もこれからミュージカル俳優になりたい人も、リスペクトして目指す境地でしょう。

Lea Salongaの歌い方の特徴は、低音から高音まで丸みを帯びたサウンドを安定して発声する能力ということに尽きます。

例えエッジを利かしたベルティングにおいても、大きく包み込むような迫力とやさしさで聴衆を魅了するテクニックは天才的です。

Sun and Moonのような音声としての軽さと明るさが求められる楽曲は、非常に高いポジションを維持する必要があるため非常に難しい。

それを難なく歌いあげるテクニックは尋常ではありません。

I’d Give My Life for Youのように前半は軽く明るい歌声、中盤・後半は鞭のようにしなる強さとギザギザしたエッジが完全に取れた丸みを帯びたしなやかさは、Lea Salongaだからこそ作り上げたものといっても過言ではありません。

ちなみにこういった歌唱パターンは、大成功しているミュージカルではよく見られ、Sierra Boggessのリトル・マーメイド Part Of Your World なども同様の歌唱です。

軽く明るく発声することは、超一流だからこそ表現可能なのです。

低音から高音まで丸みを帯びたサウンドを安定して発声する能力は、白人特有の発声や黒人独特の発声とも異なるフィリピン人オリジナルの発声と言えるかもしれません。

実際に彼らフィリピン人と仕事をするとその特性が理解できます。
白人や黒人と歌を合わせると彼らに引っ張られることがありますが、フィリピン人と一緒に歌うと引っ張られることがありません。
妙に歌が馴染み、温かい空気に包み込まれているような感覚になることが多いのです。

これは、女性だけではなく男性の歌手と歌っても同じようなことがあります。

そういった歌唱法(発声)のすべてをLea Salongaが作り出したとまでは言いませんが、大きく貢献していると思います。

また、ポップスの歌手にも桁外れに上手い歌手が多くいます。
しかも、年齢を重ねるにつれてテクニックが上がっています。

そういった環境にあるため、努力を惜しまない傾向にあるのかもしれませんね。
最後にRachelle Ann Goと歌ったThe Movie in My Mindを紹介しておきます。

Kelli Christine O’Hara/ケリー・クリスティン・オハラ

日本では『王様と私』ので王様役の渡辺謙の相手役アンナを主演したことで有名ですね。

Kelli O’Haraは、ミュージカル歌唱法の王道を極めた人物です。

24時間褒めちぎっても足りないくらい、その声楽スキルのレベルは高く、彼女はミュージカル声楽での最高のお手本と言えるでしょう。

この記事では色々なミュージカル女優を紹介していますが、教材という意味では彼女の歌声だけ聞いていてもよいぐらいです。

彼女の特徴の1つは、安定感です。

しっかりとした音圧で、低音から高音まで明るく丸みを帯びたサウンドを安定して発声する能力は、レアサロンガとはまた違った安定感があります。

またクラシックのテクニックも豊富に持っているため、さまざまな役を超一流の境地で演じきる技量には、驚かされます。

実はブロードウェイでも、実際に舞台で歌っているのを見て「音圧や共鳴が思ったほどではなかった、、、」と感じることがあります。

DVDやYouTubeで聴くと期待できる俳優でも『実際の共鳴はそれほどではない』といったケースは、耳が慣れている私たちでも遭遇することがあるのです。

ただし、だいたいにおいてそういう舞台は、他の共演者の歌声が素晴らしかったりすることがあり、掘り出しモノを見つけたような気持ちになるので、「チケット代を損した、、、」という気分になることはありませんが、ニューヨークまでの長いフライトの疲れもあり、やはり少しガッカリします。

しかし、Kelli O’Haraのような歌唱法は、そういったことはあり得ません。

完璧なブレスコントロールにより生み出す共鳴は、どんな難しいフレーズも決して高いポジションを失うことはありません。

舞台に必要な音圧を十分に発声できる女優です。

残念なことは、彼女の動画は他の俳優に比べてYouTube等のSNSにアップされているコンテンツが少ないことです。
Instagramも投稿していますが、歌っている動画は数えるほどしかありません。