ミュージカル

声帯結節から喉を守れ

オペラやミュージカルの発声は、声帯や舌根が脱力した状態でなければなりません。

脱力した状態で、はじめてオペラやミュージカルに必要な美しい歌声が響くようになります。

この記事では、あなたが声帯や舌根が脱力した状態にするためには『何が必要なのか』について触れてみたいと思います。

もしあなたが、発声に関する何かしらの問題を抱えているのであれば、今日はその問題から脱出する第一歩になることは間違いありません。

ですから、少し長い文章ですが読み飛ばさずじっくり熟読してください。

1つの勘違いからはじまる悲劇

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発声の問題を抱えている人は、そのほとんどが1つの勘違いからはじまる。

その勘違いとは、大きな声、高い声、力強い声は、声帯に強くプレッシャーを与えることにより発声できると勘違いしていることです。

その結果、1曲歌うと声が枯れたり、ヒドくなると血節が出来る

もしあなたが1曲歌って少しでも喉に疲労感があれば、あなたの発声は間違っているということです。

脱力した状態で歌うと、喉に疲労感を感じることは全くありません。
その変わり体の別のパーツが疲労するのですが、それについては後で説明します。

呪縛からの解放

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『声は喉で作られる』という勘違いは、あなたの身体にインプットされています。

喉に圧力をかけることが当たり前のようになっていますので、意識しなくても歌う時には喉を締め上げます

ですから、本人は喉に力が入っているという感覚は全くありません。

そのインプットされた呪縛を身体から解き放つ方法は1つだけです。

それは、喉にプレッシャーを与えない方が大きな声、高い声、力強い声を楽に出せることを認識させるしかありません。

私たちは、この思い込みから解放させるトレーニングをレッスンの初期段階で行います。

それが、負のスパイラルを断ち切る第一歩と考えてください。

個人差

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ほとんどの生徒が数回のレッスンで、短い時間ですが喉を脱力させた状態にさせることが出来ます。

短時間の脱力でも、これまでよりも高い音を発声することが可能です。

それにより、それまでの世界観が大きく変わり脱力した状態の方が、高い声が出るという認識が生まれます。

脳の認識を変えるためなら、短い時間で十分です。

半分位の生徒は初回で認識出来るのですが、これまでの間違った発声方法の刷り込みが深い人はそこから抜け出すことは容易ではありません。

オカルト宗教の洗脳を解くようなイメージです。

本人の意識は変わりたいと願っていても、インプットが深ければ深いほど難しいのです。

間違った発声の期間が長いほど、無意識に喉にプレッシャーを与えてしまうからです。

しかし、正しい呼吸法から発声を繰り返すことで認識を上書きすることが可能ですからご安心ください。

ボイストレーナーが『喉にプレッシャーを与えている状態』と『脱力した状態』での比較を何度も繰り返しお手本としてお見せします。

実際にトレーナーのお手本を聴いて、喉にプレッシャーを与えない方が美しい声が出るのだということを体験することが重要です。

トレーナーの圧倒的な発声を生で聞くことで、あなたのこれまでの常識を壊すことができます。

これまでの常識を壊しながらトレーナーの指導で徐々に改善することで、呪縛から解放されます。

改善が進むと音階の発声練習だけではなく1曲フルコーラス歌っても喉を締め上げることはなくなります。

最終的には、2時間~3時間の演目で歌っても喉にプレッシャーを与えない状態を維持出来るようになります。

では喉を脱力した状態にするためにはどうしたら良いのでしょうか。

それを一つずつ説明します

声楽のための呼吸

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喉を脱力させるには、横隔膜や肋間筋などの呼吸筋をフルに活動させて息を送り込む必要があります。

声楽は、喉を活動させるのではなく呼吸筋を活動させることが一番重要です。

大きな声、高い声、力強い声

この3つは、発声に問題を抱えている人の悩みベスト3です。

理解を深めるためにこの3つを例に挙げて説明します。

大きな声

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たくさんの息があった方が、大きな声が出るのはなんとなく理解できるのではないでしょうか。
ですから、大きな声は3つの中で分かりやすい例です。

しかし、誰もが陥る勘違いポイントもありますので注意が必要です。

ほとんどの人は大きな声を出すために、息をたくさん吸って喉をチカラいっぱい張って発声します。

そうすると声が大きくなったような気がします。なぜなら、自分の耳に良く聞こえるからです。

しかし、それは大きな間違い。

発声が良くなればなるほど、自分の耳には自分の声が聞こえなくなります

正しい発声では、耳のもっと上にある頭で響かせます。

ですから自分の耳には自分の歌声があまり聞こえません。

そのためにボイストレーナーが存在します。

ボイストレーナーが歌手の耳に代わりに声を判断しチューニングします。

これは日本では意外と知られていない世界の常識です。

また喉を張ると歌った気になるという大きな間違いを起こす人もいます。

喉に圧が掛かることで大声を出していると勘違いするのです。

それは自分には良く聞こえる声ですが、ミュージカルの舞台では使い物になりません

うるさいだけです。

横隔膜を使い肺から大量の空気を発声器官に送り込み、頭でビンビン響かせるとミュージカルで使うことができる大きな声が出ます。

ですから大きな声を出すためには、横隔膜や肋間筋を発達させる必要があるのです。

時々、頭で響かせるといった表現は抽象的過ぎて良くわか分からないという人がいますが、これは直接的な表現です。

喉にプレッシャーを与えたまま、頭で響かせようとすると全く響きません。

また、間違った呼吸法で発声しても全く響きません。

脳を呪縛から解放したり、呼吸法を改善したり、といった正しい順序を経てはじめて頭で響きます。

この技術を覚えると何時間も大きな声を出して歌っても声が枯れることはありません

頭で響いた歌声は美しく観衆を魅了します。
このWEBサイトでしつこいくらい何度も繰り返し言ってますが「大きな声と大きな響き」は違います

大きな響きは、ミュージカルには必須の技術なのでしっかりと習得しましょう。

高い声

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喉を絞って高い声を出そうする人がとても多いです。

高音=喉を張る・喉を締め上げる といった意識は昔から日本にある慣習みたいなもの。

「高音を出すためには、声帯を強くすれば良い」みたいな考えがあるからでしょう。

「訓練をすれば、喉を締め上げるプレッシャーに声帯が慣れて高音が出せるようになる」という論理なのだと思います。

誰が言い出したのかは知りませんが、その論理は滅茶苦茶。

それを続けると喉が短期間で壊れます。

高音でも低音でも喉は脱力した状態でなければ、正しい発声はできません。

特に喉を締め上げた状態での高音の発声は、ただの騒音。

それをミュージカルの舞台で2時間以上聞かされるお客さんは地獄ですから、今すぐやめましょう。

ほとんどの生徒は脱力した状態で発声すれば、これまでよりも高い声を簡単に出すことが出来ます。

これは、レッスンの初期段階で体験することが出来るでしょう。

しかし、それはある一定の音階までになります。

簡単に言うと息が持たないからです。

そこから先は、横隔膜や肋間筋、体幹などの呼吸筋力が必要になります。

美しい響きの高音を発声するためには、喉は脱力した状態にして、呼吸筋をフル稼働させます。

ですから、横隔膜や肋間筋がとても疲れます

記事の前半で『その変わり体の別のパーツが疲労する』と書きましたが、このことです。

残念ながら、その高音を支えるための筋力がほとんどの日本人女性にはありません。

呼吸筋の筋力トレーニングにより、それを改善することが可能です。

力強い声

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力強い声は一番理解が難しいかもしれません。

特に女性の場合は、力強い声を発声する機会がほとんどありません。

ですから、『力強い声=力いっぱいに声を出している』 といった間違ったイメージを抱くことが多いのです。

トレーニングを行っていない人がDyfing Gravity を歌うと100%力任せに歌います。

大きな声や高い声のトレーニングにより、それまでの洗脳が解けて脱力できる状態になっても、力強い声を出そうとすると急に喉にプレッシャーを与えて締め上げます。

喉にプレッシャーを与えたら瞬間的には力強い声を出すことが出来ますが、それは歌唱で使う声ではありません。

そういった声は、例えば喧嘩する時や注意を促す時など相手を威圧したり注意を引こうとする時の音声です。

例えば「火事だ~」「危ない!」「コラ!」といった言葉を発する時の発声方法ですね。

その声は美しくありません。

ミュージカルで使う声は、それが例えシャウトしていても美しい響きでなければなりません。

ベルティングボイス

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大きく高い声でしかも力強い声を出す時は、ベルティングというテクニックを使います。

ベルティングは、クラシカルな楽曲を歌う時と声を当てる場所が違います。

記事の中で、声は喉で鳴らすのではなく、頭に響かせると書きましたがその頭でも角度や場所によって音色が異なるのです。

その頭の角度や場所の中に、まるで地声で歌っているように聞こえるポイントがあります。

そのポイントに自由に当てることができるように訓練する必要があります。

これは、脱力した状態で完璧な呼吸法でなければ発声することは出来ません。

脱力した状態なので、力強さと美しさが共存しており観衆に感動を与えます。

力強くても美しい響きが生まれるのです。

ミュージカルの発声は、全て強力な呼吸器官から送り出される空気が支えています。

この呼吸方法を横隔膜呼吸法と言います。

この横隔膜呼吸法を教えて、それを歌に繋げていくためのテクニックを教えるのがボイトレマッチのボイストレーニングです。

美しい歌声は作り出すのは減点方式

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あなたには、あなたにしか出すことが出来ない本来の声があります。

あなた本来の歌声は、まだ聞いたことがないでしょう。

ミュージカルのボイストレーニングは、その本来の声を探すための旅です。

そして、そのあなた本来の声は既にもう存在しています

しかしおかしな事に、存在しているその声を発声することが出来ないのです。

横隔膜や肋間筋といった呼吸筋が未発達だったり、思い込みによる反射運動が本来の発声を邪魔するからです。

その邪魔している壁を一つずつ剥ぎ取る作業がミュージカルのボイストレーニングです。

ボイストレーニングは、現在の発声に色々なものを足してもっと良くするというイメージをお持ちかもしれませんが、その逆です。

現在の発声から余計なものを引くのです。

灰汁抜きみたいなものです。

あなた本来の歌声を見つけたら、その声をもっと大きく、もっと高く、もっと力強くするために呼吸筋を鍛えます。

声を大きく、高く、力強くするためには、喉を鍛えるのではなく呼吸筋を鍛えるのです。

それが正しいミュージカルのボイストレーニング方法です。

もし、あなたが間違った方法でトレーニングを積んでいたなら一秒でも早く正しい方法に戻してください。

間違った方法でトレーニングを続ければ続けるほど、その根は深くなり改善するための時間が長くなります。

そして、喉の故障に繋がる危険性が高くなるのです。

今からでも決して遅くはありません。

勇気ある一歩を踏み出してください。