ミュージカル

ミュージカルボイストレーニングの手順(初心者から中級者向け)

何事にも、必要なスキルを手にいれるためには、いくつかの手順を踏むことが重要です。
ミュージカルのボイストレーニングにも、同じように7つの手順があることをご存知でしょうか。
ひとつひとつの手順を飛ばさず、しっかりとこなしていく事で誰にでもミュージカルを歌えるようになるのです。
ミュージカルのボイストレーニングは、次の7つの手順から成ります。

  1. 呼吸法の改善
  2. 呼吸と発声を繋げる
  3. 裏声のコントロール
  4. マスケラで響かせる
  5. 鼻で響かせる
  6. しゃべる
  7. ベルティング

この記事では、その7つの手順を1つ1つ丁寧に紹介します。

呼吸法の改善

ミュージカルを歌うためには、ミュージカルを歌うのに必要な呼吸を身につける必要があります。

ミュージカルの歌唱法は、正しいブレスコントロール無しでは成立しません。

ですから、呼吸法のトレーニングからスタートする必要があるのです。

音階にあわせて発声練習することも大事ですが、間違った呼吸法で100万回発声練習しても上達しません。

ミュージカルを歌うためには、正しい呼吸法を身につけることが最優先なのです。

私たちはその呼吸法を横隔膜肋間呼吸法と呼んでいます。

横隔膜肋間呼吸法とは

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横隔膜呼吸法は、イタリアのオペラ歌手の呼吸方法と同じです。。

オペラだけではなく、ミュージカル、R&B、ラテンなどでも広く使われています。

一般的に腹式呼吸という言葉が浸透していますが、腹式という言葉がどうしてもお腹で呼吸をコントロールすることを連想させます。

お腹を膨らましたり凹ましたりして腹式呼吸を覚えると、間違った呼吸方法を身につける危険があります。

これに陥るとそこから抜け出すのが非常に難しくなってしまうのです。

ですから横隔膜肋間呼吸と呼んでいます。

フィジカルの改善

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呼吸法を改善するためには、フィジカルの改善が欠かせません。
歌手の場合、身体が楽器になります。
その楽器を新たに作りだす作業が必要になります。

身体のメンテナンスではなく、『新たに作り出す』と書いたのは、実際のボイストレーニングの現場では、メンテナンスといった身体の復旧作業程度の生易しいものではないからです。

『新たに作り出す』というレベルのフィジカルトレーニングを行わないとミュージカルを歌うための呼吸法までたどり着けないという現実があります。

ですからフィジカルの改善というより、フィジカルの再作成といった感じでしょうか。

日常生活での生活態度、例えば仕事やテレビを見ている、本を読んでいる、スマホを弄っている時の姿勢や歩く・座るといった動作から、あなたの身体の状態は作られています。

そして残念ながら、現在人の生活サイクルでは、ほとんどが良い状態には作られません。
声楽に必要な身体とは真逆な状態に悪化していきます。

そういった身体の問題を抱えたままでは、呼吸法を身につけることはできせん。

歌唱とフィジカルトレーニングは、結び付かないと思う人もいるでしょう。
しかし、ブロードウェイミュージカル俳優も普段から歌うためのフィジカルトレーニングを欠かさずに行っています。
※有名俳優のインスタ等のSNSを確認してみることをオススメします。

音楽というカテゴリーは、どちらかと言うと文系なイメージがありますから、「フィジカルトレーニング・・?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
実際に楽器演奏者には、必要ないかもしれません。

しかし、音楽でもミュージカルの歌唱は別モノと捉えていただく必要あります。

短時間で変化は確認できますが・・・

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短時間、呼吸法のトレーニング行えば、発声した時にある程度の効果を確認することが可能です。
しかし、その発声を楽曲の中で何分も持続させることは、非常に難しい。

正しいブレスコントロールで発声を持続させるためには、毎日の生活態度を変えることが絶対条件となります。
生活習慣や生活態度を歌仕様に変化させる強い意識が欠かせないのです。

トレーナーから様々な改善ポイントの課題を出されますから、心が折れることなく毎日の生活にトレーニングを取り入れてください。
ここを頑張る(踏ん張る?)と大きく飛躍することが出来ます。

こういった身体をつくり上げるためのベーシックトレーニングは、プロよりもアマチュア、男性よりも女性の方が受け入れて継続していく力があるように思えます。

プロや男性の場合は、自分には筋力があると思い込んでいるケースが多いようです。

しかし当ボイストレーニングの統計では、その筋肉はインナーマッスルではなくアウターであり、カチカチの硬い筋肉の人が大多数を占めています。

そういった筋肉は、ミュージカルの歌唱を習得する上では邪魔をすることがありますので、呼吸方法を学ぶような初期の段階では、逆にない方が良いくらいです。
※もちろんブレスコントロールが、パーフェクトにできる段階であれば、アウターマッスルがあることは、ミュージカルの歌唱にとって大きな問題ではありません。

また女性の場合は、男性よりも身体のラインの変化がみられるため、その過程を楽しむことができるのかもしれません。

呼吸法を改善するためのフィジカルトレーニングは、身体のラインに変化が起きます。
呼吸法を改善することによって、ステージ映えする身体のラインを同時に作り上げることができるのです。

それは、心が折れることなく毎日のトレーニングをやり遂げたご褒美のようなものかもしれません。

呼吸法と発声を繋げる

呼吸法のコツがわかってきたら、発声トレーニングをスタートします。

歌いながら繋げる

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発声トレーニングでは、音階練習とミュージカルの曲を歌います。

発声が出来てもそれが楽曲に乗らなければ、意味がありません。

「そんなこと誰でもできる」と思うかもしれませんが、これが中々難しいのです。

思うように声が出なくなる・・・。

その原因は音楽に合わせた途端に悪い癖が出てくるからです。

歌うと構えた瞬間に身体が硬直し、身体に叩き込んだはずの呼吸法がどっかにすっ飛んでしまうようです。

しかし、この段階になると以前より自分の声を聞き取る耳が育っていますので、間違っている発声に気がつきます。

正しい発声ができない自分にイラつく時期かもしれませんが、これを超えれば歌えるようになるという期待も持つことができる時期です。

ボイストレーニングがとても楽しくなり、成長していることの実感が沸くでしょう。

トレーナーが発声の見本を見せながら、正しい呼吸と発声に戻します。

こういったトレーニングを続けると段々と発声から歌になってきます。

マスケラ

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声の響きは声帯で作られるわけではありません。

顔と頭と鼻で響かせます。

マスケラは顔で響かせるテクニックです。

マスケラを使うと、歌声に張りがある力強い声に生まれ変わります。

裏声だけではなくミックスボイスでもマスケラを常に使えるようにトレーニングします。

太く力強い声を喉で出そうとしている人がいますが、それはクネーデルになります。

クネーデルは声楽の世界では最低の評価ですから、絶対にNGです。

声楽家として耳が未熟だとマスケラを喉を締め上げて声を出しているように聞こえます。

最初は聞き分けが難しいので、トレーナがマスケラとクネーデルの両方の発声をお手本として聞かせてくれます。

聞き比べを行うと明らかな違いを確認することができます。

そうやってトレーニングすることで、次第にマスケラを聞き分けて自分でもそのポジションがわかるようになります。

鼻で響かせる

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ここからがクラシックと異なる発声トレーニングとなります。

鼻で響かせるのは、ミュージカルだけではなくアメリカンポップスやR&Bでも使われています。

鼻で響かせることにより、声に芯が注入されゴムのようなしなやかさが加わります。

この鼻で響かせるテクニックを習得した声が、あなたのオリジナルの声質です。

響かせるポジションを間違えるとただの鼻声になりますので、トレーナーが正しいポジションを探りながら指導します。

ミュージカル特有のしゃべる

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ミュージカルは歌ってはいけません。

これはセリフのことではありません。歌のことです。

もしミュージカルの曲を普通に歌ってしまったら、面白くもなんともない音楽になります。

文化祭のミュージカル公演ならそれでも良いかもしれません。

しかし、プロの世界では残念ながら失業します。

この記事では「話す」とは書きません。「しゃべる」と書きます。話すよりもしゃべるの方が、皆さんに伝わる気がするからです。

この「しゃべるように歌う」テクニックはオペラでも良く使われる声楽テクニックです。

演者の表現力が観客に評価される重要なポイントとなります。

横隔膜呼吸法が完璧に出来ていれば観衆を圧倒する表現力となりますが、呼吸法が未熟な場合はわざとらしさばかりが目立つ表現となります。

日本人の壁

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しゃべるという声楽テクニックは日本人が一番難しく感じる歌唱法かもしれません。

英語やイタリア語を話すネイティブスピーカーは、しゃべる発声そのものが歌うための呼吸になっていることが多く、しゃべる事と歌うことの境界線をあまり意識していないように思います。

ですから、伴奏が鳴りそれに合わせて話しているだけで歌になるのです。そしてそれが自然な音声として聴こえてきます。

しかし、日本人は違います。
現代の日本人は、横隔膜肋間呼吸で話す人は少数派です。

日本語は、横隔膜肋間呼吸など行わなくても、ほとんどの言葉を発することができる特徴があります。

日本語は極少量の息で発することが可能であり、しかも舌をあまり動かさない発声でも相手に通じてしまうというエコ?な言語です。

この特性はミュージカルを歌う上では、ものすごい弱点となります。

この特性があるため、日本人は歌う時に「歌うこと」を意識し過ぎます。

伴奏がなった瞬間に歌モードになるため、しゃべることが出来ないのです。

また、しゃべると意識すると普段の話し癖が出てきてモゴモゴ・・と何を言ってるのかサッパリわからなくなります。

このしゃべるという歌唱法は、呼吸のトレーニングを真面目に取り組んだ人ほど早く上達します。

最初に取り組んだ呼吸法のトレーニングが、この段階になってくると爆発し、一気に良い結果として花咲きます。

しゃべる歌唱法が未熟な人は、わざとらしさや不自然さが目立ちます。

ベルティング

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ベルティングを覚えると高音まで楽に発声することができます。

ベルティングは、地声ではありません。
強いミックスボイスですが、残念ながらミックスボイスの発声方法だけではベルティングにはなりません。

ベルティングは間違えて教えると喉を壊す原因になります。

ですから、教える側も注意してテクニックを伝える必要があります。

教える人は、最低限クラシックの正規教育を受けていて、プロのトレーナーとして経験を積んでいる必要があるでしょう。

ベルティングのことを文章にすると、それを読んだ人が未熟な呼吸法で真似する可能性があります。それは喉を壊す危険度が高まるので、これ以上書きません。
ボイストレーナーに直接教わってください。

文章にはしませんが、ボイトレマッチで上記の手順通りにトレーニングを積めば100%ベルティングが出来るようになりますのでご安心ください。

手順を間違えてはいけない

歌の体裁だけを整える歌唱力であれば、呼吸法のトレーニングなど適当に行い発声トレーニングで十分です。

しかし、それで困るのはそういったトレーニングを受けた続けた人です。

呼吸に力がないため喉が上がってしまい、耳障りな声になってしまいます。

また、喉の故障にもつながります。 カラオケの点数をあげるためにはそれで良いかもしれませんが、ミュージカルでは通用しません。

ボイストレーニングには手順があり、その手順に従って学ぶことが一番の近道です。